1型糖尿病を、食べすぎや運動不足のせいだと思っている人が、まだいます。
救急外来で会う1型の患者さんは、子どものころからずっとインスリンを打ち続けてきた人が多い。生活習慣で防げた病気ではありません。免疫が自分の膵臓のβ細胞を攻撃して、インスリンをほぼ作れなくなる自己免疫疾患です。
「糖尿病」という同じ名前が、誤解のもと
世間で「糖尿病」と聞いてイメージされるのは、多くの場合2型のほうです。食事や運動などの生活習慣が発症に関わるタイプ。健診で指摘されて、節制の話になる、あの文脈です。
1型は成り立ちがまったく違います。ある日、免疫が自分の体を攻撃し始める。本人の行いとは関係なく、子どもでも発症する。インスリンが作れなくなるので、打たなければ生きていけません。「頑張って生活を直せばインスリンをやめられる」という話ではないんです。
同じ名前を背負っているせいで、1型の患者さんは2型向けのイメージごと誤解されてきました。
「甘いもの、食べすぎたんじゃないの」
その一言が、ずっと刺さり続けてきた人たちです。
学校で、職場で、ときには病院でも。子どものころに発症して、何十年も毎日注射を続けて、血糖と付き合いながら普通に生活している。その積み重ねの上に「自業自得でしょ」という視線が乗る理不尽を、想像してみてほしいんです。
だから救急外来でも、「糖尿病があります」の一言で分かった気にならず、1型なのか2型なのか、どんな治療を続けてきたのかを確認します。背景がまるで違う二つの病気を、同じ引き出しに入れないために。
医療者も他人事ではありません。恥ずかしい話、新人のころの私は「糖尿病」とひとくくりに考えていた時期がありました。問診の何気ない一言、ご家族への説明の一言に、2型向けの生活指導の空気が混ざる。悪気がないぶん、たちが悪い。
知っている人が増えるだけで、変わる
1型糖尿病は、自己免疫の病気。食べすぎのせいじゃない。
それを知っている人が一人増えるだけで、あの一言は少しずつ減っていきます。この記事が、その一人ぶんになれば十分です。
---
参考文献
- 糖尿病領域の標準的教科書における、1型糖尿病の病態(自己免疫性の膵β細胞破壊)の記載