お腹が張って、何日も便が出ない。「ただの便秘」だと思って、市販の下剤を足してみた——救急に来るイレウス(腸閉塞)の方に、このパターンがいます。
入口はそっくり、中身は別物
便秘とイレウスは、入口の症状がそっくりです。お腹が張る、便が出ない、なんとなく苦しい。ここまでは同じ顔をしています。
でも中身は別物です。便秘が「出口の渋滞」だとすれば、イレウスは腸の動きそのものが止まっていたり、腸のどこかが物理的に詰まっていたりする状態。道路でいえば、混んでいるのではなく、道そのものが塞がっている。
下剤を「足す」ことの怖さ
塞がった道に、後ろから車を送り込んだらどうなるか。行き場のない腸の中身がさらにたまって、腸はパンパンに張っていきます。圧が上がり続ければ、最悪、腸が破れる方向に進むこともあるんです。
「効かないから、もう1錠」。これがいちばん危ない足し算です。市販薬で数日やり過ごせてしまうぶん受診が遅れて、重くなってから運ばれてくる。
「ただの便秘」と思う前に
正直に言うと、便秘とイレウスの見分けは、プロでも症状だけでは簡単ではありません。だからこそ、次のようなサインがあれば「便秘の自己対処」をいったんやめて、受診してください。
- 腹痛が強い、波のように差し込む
- 吐き気や嘔吐がある
- お腹がパンパンに張って苦しい
- 便もおならも出ていない
- 下剤を飲んでも出ないのに、張りだけ増していく
迷ったら受診で構いません。「便秘くらいで病院なんて大げさ」と思うかもしれませんが、救急の側から見れば、イレウスを便秘のまま何日も抱えているほうが、ずっと大ごとです。
お腹の中は、外からは見えません。見えないものを、自己判断で押し切らない。下剤をもう1錠足す前に、この話を思い出してください。
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参考文献
- 腸閉塞・イレウスの病態と初期対応に関する救急領域の標準的教科書の記載