「倒れてピクついた=てんかん」は、誤解です。
失神でも、脳への血流が一瞬足りなくなったときに体がピクつくことがあります。痙攣性失神と呼ばれるもので、目撃した人には痙攣発作とそっくりに見える。「けいれんしてました!」という救急要請の第一報が、蓋を開けたら失神だった、というのは珍しくありません。
決定的な違いは3つ
見た目が似ていても、分かれるポイントがあります。
- 回復の速さ:失神は20〜30秒で意識が鮮明に戻る。痙攣は発作のあと、数分〜数時間「もうろう」とした状態が続く
- 舌を噛む場所:失神で舌を噛むことは稀で、噛んでも舌先。痙攣では「舌の側面」をガリッと噛んでいることが多い
- 採血データ:痙攣のあとは筋肉が激しく収縮した分、乳酸値が上がりやすい。乳酸値が正常なら失神寄り
ひとつだけで決めつけるものではありませんが、この3つがそろってくると、絵がだいぶはっきりします。
なぜ見分けたいのか
失神と痙攣では、そのあとに調べる方向がまったく違うからです。入口の見立てがずれると、原因の検索が回り道になる。もちろん診断するのは医師です。ただ、その判断材料の多くは「発作を見ていた人の記憶」と「発作後の様子の観察」からしか手に入りません。つまり、看護師と目撃者が拾えるかどうかにかかっています。
発作の"あと"に、情報が詰まっている
だから私が最初に聞くのは、倒れた瞬間のことだけではありません。「目が覚めるまで、どのくらいかかりましたか」「起きたあと、すぐ会話できましたか」。
記録も同じです。新人のころの私は「けいれん様の動きあり」とだけ書いて満足していました。今なら、続いた長さと、意識の戻り方まで残します。あとから読む人にとって、価値があるのはそこなので。
もし目の前で誰かが倒れたら、救急要請と安全確保が最優先です。そのうえで余裕があれば、意識が戻るまでの時間と、戻ったあとの受け答えの様子を覚えておいてください。スマホで時刻を見るだけでもいい。その記憶が、検査より雄弁なことがあります。
派手なのは倒れる瞬間ですが、答えが落ちているのは、いつも発作のあとです。
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参考文献
- 救急医学の標準的教科書における、失神と痙攣発作の鑑別に関する記載