「気を失ったけど、すぐ戻ったから大丈夫」。この言葉、救急外来で本当によく聞きます。
でも、失神の原因によっては、次の瞬間に心停止を起こすリスクがあります。
「すぐ戻る」のは、失神の性質でしかない
失神は、脳への血流が一時的に足りなくなって意識を失う状態です。血流が戻れば、意識も戻る。だから「すぐ戻った」というのは、失神という現象の性質であって、原因が軽かった証拠にはならないんです。
立ちくらみの延長のような、心配のいらない失神ももちろんたくさんあります。問題は、見た目ではそれと区別がつかない失神が混ざっていることです。
私たちが怖いのは「心血管性失神」
表向きは「元気そう」に見えても、心臓の電気系統のトラブル(不整脈)や弁膜症が原因で倒れた「心血管性失神」が隠れているケースがあります。
心臓が原因で脳への血流が途絶えたということは、同じことが次にもう一度、もっと長く起きるかもしれないということです。そのとき意識が「すぐ戻る」保証はどこにもありません。だから私たちは、ケロッとして「もう帰りたいんだけど」と笑っている失神の患者さんほど、モニターを外す手が慎重になります。
倒れる前後の話が、いちばんの手がかり
看護師として失神の患者さんに会ったら、聞きたいことがあります。倒れる直前、何をしていたか。運動中や労作中ではなかったか。前触れ(気が遠くなる感じ、動悸、胸の違和感)はあったか。それとも何の前触れもなく、記憶が途切れたか。
前触れなく突然落ちた失神は、心臓由来を疑う理由になります。こうした情報を集めて医師に伝えるところまでが、私たちの仕事です。検査や帰宅の判断は医師がしますが、その判断の材料は、ベッドサイドの会話に落ちています。
「すぐ戻った」は、受診しない理由にならない
ご本人やご家族に伝えたいのは、これだけです。気を失って倒れたなら、すぐ戻っても受診してください。周りにいた人は「倒れる前に何をしていたか」「どんなふうに倒れたか」を覚えておいて、そのまま伝えてもらえると、ものすごく助かります。
「すぐ意識が戻った」は、安心の理由にはならないんです。
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参考文献
- 救急医学・循環器領域の標準的教科書における失神(心血管性失神)の記載