← 看おじの知識ノート
循環器 体験談 2026-07-08

胸骨圧迫のテンポ、私はいまだに「ぶんぶんぶん」で刻んでいる

#胸骨圧迫#CPR#心停止#BLS

胸骨圧迫のリズム、私はいまだに「ぶんぶんぶん ハチが飛ぶ」で刻んでいます。

心臓が止まった人の胸を押すテンポは、1分間に100〜120回。数字で聞くと「なるほど」で終わるんですが、いざその場に立つと、秒針を見ながら数えている余裕なんてありません。だからみんな、体に染みついた曲でリズムを取るんです。

なぜテンポがそんなに大事なのか

胸骨圧迫は、止まった心臓の代わりに、外から胸を押して血液を送り出す処置です。遅すぎれば、脳に届く血流が足りない。逆に速すぎると、押したあとに胸が元の位置まで戻りきらず、心臓に血液が充填される時間がなくなって、一回に送り出せる量が減ってしまいます。

「強く、速く、絶え間なく」とよく言われますが、「速ければ速いほどいい」ではないんですね。ちょうどいい速さを、疲れてきても、動揺していても、保ち続ける。そのための道具が「曲」です。

現場は、それぞれの曲が流れている(頭の中で)

有名なのは「アンパンマンのマーチ」。私の職場でも先輩がこれ派でした。若い子は、私の知らない今どきの曲でリズムを取っているらしい。世代がそのまま選曲に出ます。

で、私だけひとり、蜂を飛ばしている。

童謡「ぶんぶんぶん」って、テンポが本当にちょうどいいんです。誰に教わったわけでもなく、新人のころの私が急変対応で頭が真っ白になったとき、なぜか出てきたのがこれでした。以来、心停止の胸を押すたびに、頭の中を蜂が飛んでいます。傍から見れば真剣そのものの場面で、本人の脳内は「お池のまわりに野ばらが咲いたよ」。この仕事、たまにそういうおかしみがあります。

一般の方に伝えたいのは、ここ

もし目の前で人が倒れて、119番の指示で胸骨圧迫をすることになったら。正確に数えようとしなくていいです。知っている曲、それも自分が口ずさめるくらい体に馴染んだ曲で、一定のリズムを刻み続けてください。

うまくやることより、止めないこと。救急車が着くまでのあいだ、あなたの手とその曲が、その人の脳と心臓を守ります。

蜂でも、アンパンマンでも。

---

参考文献

  • 救急蘇生領域の標準的な講習・教科書における胸骨圧迫のテンポ(100〜120回/分)と深さに関する記載
看おじのThreadsを見る