ショックって聞くと、脈が速いイメージだと思います。実際、そういう患者さんは多いです。
でも、不整脈が原因のショックには、速いパターンと遅いパターンの両方があります。
速くて落ちる人、遅くて落ちる人
たとえば心房細動で脈が180くらいまで上がって、血圧が落ちる人がいます。心臓が空打ちのように速く動きすぎて、血液を溜めてから送り出す、という本来の仕事が間に合わなくなるイメージです。
一方で、完全房室ブロックで脈が30台、顔面蒼白で運ばれてくる人もいます。こちらは逆に、心臓の電気の通り道が途切れて、拍動の回数そのものが足りない。一回一回がどれだけ頑張っても、回数が半分以下になれば、全身に送れる血液は足りなくなります。
速すぎても、遅すぎても、結果は同じ「血圧が保てない」に行き着く。ここが不整脈のショックの怖いところです。
「速いから危ない」の思い込みが、遅い方を取りこぼす
新人のころの私は、モニターの数字が跳ね上がるアラームにばかり反応していました。140、160と上がっていく数字は、いかにも危なく見えるんです。
でも、心電図のレートだけ見て「速いから危ない」と思い込んでいると、遅すぎて危ない方を取りこぼします。レート30台のアラームは、画面の上では静かです。波形もゆっくりで、一見おだやかにすら見える。その静かな画面の向こうで、患者さんの顔から血の気が引いていることがあります。
数字の速い遅いより、患者さんを見る
だから私は、モニターのレートは「速い・遅い」ではなく「この人の血圧を保てているか」とセットで見るようにしています。
顔色はどうか。冷や汗をかいていないか。受け答えがぼんやりしてきていないか。橈骨動脈は触れるか。レートが極端な値のときほど、ベッドサイドに行って、この目で確かめる。遅い不整脈でショックになっている患者さんなら、医師への報告と並行して、経皮ペーシングができる除細動器をベッドサイドに寄せておく。ここまでが看護師の仕事です。
速い不整脈は目立つから、みんな気づきます。遅い不整脈に気づけるかどうかで、差がつきます。
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参考文献
- 救急看護領域の標準的教科書における不整脈とショックの記載