敗血症性ショックでは、有効な抗菌薬が1時間遅れるごとに救命率が平均7.6%下がった——そんな有名な研究があります(Kumarら, 2006)。その後の研究では、ここまできれいな時間依存性は必ずしも再現されていませんが、「遅れるほど不利になる」という方向は変わりません。
だからER看護師が「敗血症かも?」と思ったら、秒で動く。新人のころの私は、この「秒で動く」の重さがわかっていませんでした。検査の順番も、なぜ焦るのかも、言われるままに手を動かしていただけでした。
「1時間バンドル」で外せないこと
敗血症の初期対応には、最初の1時間でやりきりたい項目がまとまっています。基本的にはすべて医師の指示のもとで進みますが、看護師が中身を知っているかどうかで、準備の速さがまるで変わります。
- 乳酸値の測定(2mmol/Lを超えると要注意とされます)
- 抗菌薬を入れる前の血液培養(これは鉄則です)
- 抗菌薬の投与
- 30mL/kgの急速輸液
- 昇圧薬の検討(平均血圧65mmHgの維持を目安に)
とくに血液培養は「抗菌薬の前」。順番を逆にすると、後から菌が捕まえにくくなります。新人のころ、良かれと思って抗菌薬を先に吊るそうとして止められたことがあります。あの順番には理由があったんだと、あとで腑に落ちました。
数字を知っていると、危険度が測れる
投与量も投与の判断も、決めるのは医師です。では看護師が数字を覚えて何になるのか。答えは、「今この人がどれだけ危ない状態か」を自分で測れるようになることです。
乳酸値が高い、血圧が保てない、尿が出ない。ひとつひとつの数字が、頭のなかの「1時間バンドル」と照らし合わさって、「これは秒で動く場面だ」と体が判断できる。そのアセスメントが、報告のスピードと的確さに直結します。
「あとで」を減らすのが看護
敗血症は、まさに「あとで」が命取りになる病態です。あとで培養、あとで輸液、あとで報告——その積み重ねが時間を溶かしていきます。
だから私は、疑った瞬間に必要なものを頭のなかで並べ始めます。医師が指示を出す前に、培養ボトルとルートと輸液を手元に寄せておく。指示が出た瞬間に動き出せる状態をつくっておくことが、あの7.6%と静かに戦う看護だと思っています。
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参考文献
- 敗血症診療における1時間バンドル(Surviving Sepsis Campaign)の記載
- 日本版敗血症診療ガイドラインにおける初期蘇生の記載