「右胸が痛い? 心臓は左だから大丈夫でしょ」。その思い込みは、通用しません。
実は「右側の胸痛」には、心筋梗塞と同じくらい命に関わる病気が隠れていることがあります。
右が痛くても危ない病気は、ちゃんとある
元の投稿で挙げた4つを、少しだけ詳しく書きます。
- 肺塞栓症(いわゆるエコノミークラス症候群):足などにできた血の塊が肺の血管に飛んで詰まる病気。肺は左右にあるので、詰まった場所しだいで右胸が痛みます
- 緊張性気胸:肺に穴が空いて漏れた空気が胸の中にたまり、心臓や大きな血管を圧迫していく状態。右の肺に起これば、右が痛い
- 大動脈解離:大動脈の壁が裂ける病気。裂け目が右側へ進めば、痛みも右に出ることがあります
- 胆石・胆嚢炎:お腹の病気ですが、痛みが右肩や右胸に響く(放散する)ことがあります
どれも「右だから」で除外できません。むしろ胸痛の現場では、左か右かより「どんな痛みか」「呼吸や冷や汗を伴うか」のほうがずっと大事です。
「心臓=左」のイメージが、判断を狂わせる
心臓が左寄りにあるのは事実です。だからこそ「左胸が痛い=心臓かも」という警戒は、一般の方にもよく浸透しています。これ自体はいいことです。
問題は、その裏返しで「右なら心臓じゃない、なら大丈夫」と飛躍してしまうこと。上に挙げた病気たちは、その隙間に入り込んできます。しかも肺塞栓症も緊張性気胸も大動脈解離も、進行すれば一気に命に関わるタイプです。
新人のころの私も、正直「胸痛=まず心臓=左」という頭で考えていました。右の胸痛と聞くと、少しだけ緊張がゆるむ。あの感覚は、勉強して意識的に捨てるまで、自然には消えませんでした。医療者ですらそうなのだから、一般の方が「右だから平気」と考えるのは当然なんです。だからこそ、しつこく書いています。
迷う痛みは、迷ったまま来てください
突然の胸の痛み、深呼吸で強くなる痛み、冷や汗や息苦しさを伴う痛み。こういうものは、右でも左でも、ためらわず受診してください。夜中でも、です。
救急外来で「右だったから様子を見ちゃって」と聞くたびに、あの思い込みの根深さを感じます。左右で選別しているのは体ではなく、思い込みのほうなんです。
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参考文献
- 救急医学領域の標準的教科書における胸痛の鑑別(肺塞栓症・気胸・大動脈解離・胆道系疾患の放散痛)の記載