小児救急の専門で働いたことはありませんが、これだけは知っています。
怖いのは、ギャン泣きしている子じゃないんです。抱っこの中で、ぐったりして静かにしている子のほうです。
泣く力は、余力
大人の救急と同じです。声を出して暴れている間は、まだ力が残っている。
泣くというのは、実はかなり体力を使う仕事です。大きな声を出して、手足を突っ張って、親の腕の中で反り返る。あれができるうちは、体に余力がある。診察室で耳をつんざくような泣き声を聞くと、正直ほっとする自分がいます。
本当に危ないのは、泣く力さえ残っていない子。刺激しても弱々しくしか反応しない、あやしても目が合わない、抱っこの中でだらんとしている。待合室で「静かないい子」に見える子ほど、私たちは先に診たくなります。
救急外来の順番が受付順どおりに進まないのは、この「静かさ」を拾って入れ替えているからでもあります。騒がしさと緊急度は、子どもでは比例しません。
子どもは、落ちるのが速い
「さっきまで元気だったのに」と親御さんが言う、その"さっき"からの落ち方が、子どもはとにかく速いんです。
子どもの体は、限界近くまで頑張れてしまう分、頑張りが切れたときの傾きが急です。夕方まで走り回っていた子が、夜には別人のようにぐったりしている。この速さは、大人の感覚で「一晩様子を見よう」と構えていると置いていかれます。
家で迷ったら、「元気のなさ」を見てください
熱の数字より、見てほしいのはこちらです。
- 泣き方がいつもと違って、弱々しい
- あやしても反応が乏しい、目が合わない
- 顔色が悪い、ぐったりして起こしても起きない
ひとつでも当てはまったら、夜中でも受診してください。「泣きすぎて心配」より「静かすぎて心配」のほうが、救急では何倍も緊急です。
大泣きしている子を連れてきて、何ともなかった。それは全然「大げさ」ではありません。元気に泣けているという確認ができただけで、受診の価値はあります。迷ったら、来てください。
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参考文献
- 小児救急領域の標準的教科書における、重症感(ぐったり・活気低下)の評価に関する記載