陥没呼吸は、あるかないかで見ても半分しか分かりません。
救急外来に呼吸が苦しそうな子が来たとき、私たちがまず確認するのは「どこがへこんでいるか」です。
のどの下と鎖骨の上だけなのか。肋骨と肋骨の間まで引き込まれているのか。みぞおちまで動いているのか。同じ「陥没呼吸あり」でも、へこむ場所によって、体の中で起きていることの深刻さが違います。
へこみが下に降りるほど、重い
呼吸が苦しいとき、体は胸を広げるための筋肉を総動員して、狭くなった気道から空気を引き込もうとします。そのとき、胸のやわらかい部分が内側に引っ張られてへこむ。これが陥没呼吸です。
まだ余力があるうちは、のどの下のくぼみや鎖骨の上あたりが、息を吸うたびにきゅっとへこむ程度。それが肋骨と肋骨の間まで引き込まれるようになり、さらにみぞおちまで大きく動き出す。へこむ場所が下へ広がっていくのは、それだけ体が全力で息をしている、ということです。
だから私たちは「陥没呼吸あり」の一言では済ませません。どこが、どのくらい。さっきはのどの下だけだったのが、いま肋間まで来ていないか。場所の変化そのものが、良くなっているのか悪くなっているのかを教えてくれます。申し送りに「どこ」を一言足すだけで、次に見る人が変化に気づけます。
いちばん大事なサインは、服の下にある
そして陥没呼吸は、服の上からはほとんど見えません。
これが本当に落とし穴で、抱っこされたまま、上着を着たままの子を遠目に見て「呼吸は苦しくなさそう」と思ってしまう。胸とおなかをきちんと出して初めて、へこみは見えます。新人のころの私は、泣かせたくない一心で服をめくるのをためらうタイプでした。いま思えば、いちばん見るべき場所から目をそらしていたわけです。
ご家庭でも、めくって見てください
お子さんの呼吸が苦しそうだと感じたら、服をめくって胸とおなかを直接見てください。息を吸うたびに肋骨の間やみぞおちがぺこぺこへこんでいたら、それは体が全力で呼吸しているサインです。夜間でも、ためらわずに受診してください。
ゼーゼーという音は耳に入ってきますが、へこみは自分から見にいかないと見えません。見にいく人だけが気づける、静かなサインです。
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参考文献
- 救急看護・小児看護領域の標準的教科書における陥没呼吸(呼吸窮迫の徴候)の記載