手術前って絶食でしょ。水もダメだと思っている人、けっこう多いです。
でも――実はブラックコーヒー、飲んでいい場合があるんです。私も昔は「手術前はとにかく口から何も入れちゃダメ」と単純に覚えていて、患者さんに一律で説明していた時期がありました。
「透き通った飲み物」の扱い
麻酔の2時間前までなら、ブラックコーヒーはOK――というのが、いまのガイドラインに書かれている考え方です。水やお茶と同じ、「透き通った飲み物(清澄水)」の仲間として扱われます。
これは、胃の中に残った内容物が麻酔中に逆流して、気管に入ってしまう「誤嚥」を防ぐための決まりです。透き通った飲み物は胃から出ていくのが速いので、直前まで少量なら許容される、という理屈です。ずっと絶飲食で我慢させるより、適切なタイミングまで水分を摂れたほうが、患者さんの負担も減ります。
ただし「ブラックに限る」
気をつけたいのは、ミルク入りは別物、というところです。
- ブラックコーヒー・水・お茶・果肉のない透明なジュース → 透き通った飲み物の仲間
- 牛乳・ミルク入りコーヒー → 胃から出ていくのが遅いのでアウト
牛乳は胃にとどまる時間が長いので、カフェオレ派の人は残念ながら対象外。ここを混同すると、せっかくの決まりが台無しになってしまいます。
ルールは施設と主治医の指示が最優先
大前提として、何時間前まで何を飲んでいいかは、受ける手術や麻酔の種類、その人の状態によって変わります。最終的な絶飲食の指示は、麻酔科医・主治医が出すものです。
だから正しくは、「絶飲食=口から一切ダメ」と思い込まず、「いつまでに何なら飲んでいいですか」と確認すること。思い込みで前日から一滴も飲まずにフラフラで来る、という遠慮のほうが、かえってつらい思いをさせてしまうことがあります。
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参考文献
- 日本麻酔科学会『術前絶飲食ガイドライン』