ERに運び込まれた、20代の女性。全身に激しい発疹、そして呼吸困難。原因は、友人からもらった「1錠の鎮痛剤」でした。
彼女には、自分でも気づいていなかった「NSAIDs過敏症」という体質がありました。頭痛薬や解熱鎮痛薬に含まれる成分(NSAIDsと呼ばれる種類)に、体が過敏に反応してしまう。ふつうの人にとっては、ただの痛み止めです。でも、ある体質の人にとっては、引き金になり得る。
反応の出方には幅があります。「アスピリン喘息(NSAIDsで喘息発作が出るタイプ)」もあれば、彼女のように蕁麻疹のような発疹や、進めばアナフィラキシーに至るタイプもある。どの出方でも、共通するのは「NSAIDsが引き金になる」という点です。
「ふだん飲めている」が油断になる
こわいのは、こういう体質があっても、多くの人はふだん自覚がないことです。
たまたまその成分の薬を飲む機会がなかっただけ、ということもあります。「これまで平気だったから今回も大丈夫」は、残念ながら保証になりません。市販薬にも、風邪薬にも、痛み止めの成分は広く入っています。自分がどの成分に弱いのかを知らないまま、なんとなく飲んでいる人は、決して少なくない。
だから「資格を持った人」が出している
もし処方したのが医師だったら、既往やアレルギーを確認したうえで、絶対にその薬は選ばなかったはずです。
でも、薬を渡した友達は、彼女の持病もアレルギーも知りません。悪気はまったくない。「痛いなら、これ効くよ」という善意です。だからこそ怖い。薬は、正しく使えば助けになり、体質次第では毒にもなる。既往歴を踏まえて薬を選び、責任を持って出す。それを担うのが、資格を持った人なんです。人からもらった薬を安易に飲まない、そして人にも軽い気持ちであげない。ここは線を引いておきたいところです。
現場でできること、伝えられること
こういう患者さんが来たら、看護師がまず確認したいのは、何を・いつ・どれくらい飲んだか、そして過去に薬で発疹や息苦しさが出たことはないか、です。使った薬をどうするか、治療をどう進めるかは、医師の判断になります。私たちはその材料を、落ち着いて、正確に集める。
そして退院までのどこかで、そっと伝えたい。「痛み止めで具合が悪くなったことがある人は、それをお薬手帳やスマホにメモしておいてください」。次に別の場所で薬を出されるとき、その一行が自分を守ってくれます。
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参考文献
- 救急看護領域の標準的教科書におけるNSAIDs過敏喘息(アスピリン喘息)および薬剤アレルギー問診に関する記載