喘息のヒューヒューが、ふっと静かになる。
このとき「やっと落ち着いた」とほっとする人が多いです。ご家族はもちろん、正直に言うと、昔の私もそうでした。
でも救急外来では、その静けさが一番こわいことがあります。
音が出るのは、まだ空気が通っているから
あのヒューヒュー(喘鳴)は、狭くなった気道を空気が無理やり通り抜けるときの音です。つまり音が鳴っているうちは、狭いなりに空気が通っている。
気道があるところまで狭くなると、空気そのものが通らなくなって、音を鳴らす隙間すらなくなります。ゼーゼーは消えたのに、肩で息をして、ぐったりしている。そういう状態で明け方に運ばれてくる子がいます。
「サイレントチェスト」と呼ばれる状態で、喘息発作の中でも最も危険なサインのひとつです。
私たちが音より先に見ているもの
だから救急外来では、音の大きさだけで安心も心配もしません。見ているのはむしろこっちです。
- 話せるか:ひと続きの文章で話せるか、単語しか出ないか
- 呼吸のしかた:肩で息をしていないか、鎖骨の上やあばらの間がへこんでいないか
- 顔色と活気:ぐったりしていないか、唇の色は悪くないか
- 姿勢:横になれず、前かがみで座り込んでいないか
音が派手でも、しっかり喋れてけろっとしている子もいます。逆に、静かなのに単語しか出ない、横になれない。そちらの方がずっと切迫しています。
「静かになった」の受け取り方
発作の途中で音が消えたのに、本人の苦しさが続いている。呼吸が浅く速い。ぐったりしてきた。そんなときは「治った」ではなく「悪化したかもしれない」と考えて、ためらわずに受診してください。夜間でも、です。
音が消えた、イコール治った、とは限らない。喘息の子を持つご家族にも、同業の若い子にも、これだけは覚えて帰ってほしいです。
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参考文献
- 日本小児アレルギー学会『小児気管支喘息治療・管理ガイドライン』
- 日本アレルギー学会『喘息予防・管理ガイドライン』