過呼吸で運ばれてくる人は、けっこうな確率で手が固まっています。
指先がすぼまって、何かをつまむような形になる。本人は「手が動かない、しびれる」とさらにパニックになる。この光景、過換気の現場では本当によく見ます。
酸素が足りないから、ではない
多くの人が「酸素が足りないから手がしびれる」と思っています。でも、実は逆なんです。
過呼吸で起きているのは、酸素の不足ではなく、吸いすぎ・吐きすぎです。息をハアハアと激しくくり返すことで、体の中から二酸化炭素がどんどん抜けていく。この「吐きすぎ」が、手が固まる引き金になります。
血液が傾いて、神経が過敏になる
二酸化炭素は、血液の酸性・アルカリ性のバランスを左右しています。吐きすぎて二酸化炭素が減ると、血液はアルカリ性のほうへ傾く。
このバランスが崩れると、体の中のカルシウムの働きが一時的に変わり、神経や筋肉が過敏になります。その結果、手足の先がしびれ、筋肉が勝手にこわばって、あのつまむような形(テタニー、助産師の手とも呼ばれます)になる。つまり手のこわばりは、酸欠のサインではなく、吐きすぎのサインなんです。ここを取り違えると、「もっと吸わせなきゃ」と逆方向に進んでしまいます。
本人にしてあげたい、たった一言
手が固まると、本人は「しびれてきた、もっと苦しい」とさらに息を速める。悪循環です。だからこそ、仕組みを一言で返してあげたい。
「それは酸素が足りないんじゃなくて、吸いすぎて起きていることですよ。息を吐くほうをゆっくりにしましょう」。この説明が届くだけで、少し落ち着ける人がいます。もちろん、過換気だと決めつける前に、本当に呼吸や循環の異常が隠れていないかを確認するのが先です。そのうえで、しびれの正体を静かに翻訳してあげる。それも立派な処置だと思っています。
---
参考文献
- 救急看護領域の標準的教科書における過換気症候群およびテタニーの発生機序に関する記載