ノルアドレナリンを開始して血圧が上がった。よかった、と安心している新人さん、ちょっと待ってください。
そのとき、モニターの「心拍数」が下がっていませんか。「血圧を上げたのに、なんで脈が遅くなるの?」——新人のころの私も、ここで一度、頭が止まりました。
実は、体の正常な反応
これは、生体のごく正常な反応であることが多いです。「圧受容体反射(バロレフレックス)」と呼ばれるしくみです。
首や胸の太い血管には、血圧を感じ取るセンサーがついています。ノルアドレナリンで血圧が急に上がると、このセンサーが「上がりすぎだ、ちょっと落ち着け」と反応して、心拍を下げにくる。つまり、体が自分でブレーキをかけて、血圧を上げすぎないよう調整している姿です。
だから、昇圧剤で血圧が上がったあとに脈が少し落ち着くのは、多くの場合「体がちゃんと反応している」サインとして説明がつきます。あわてて「不整脈だ」と早合点しなくてよいことも多いのです。
ただし「正常反応だから安心」で止めない
とはいえ、脈が遅くなる原因は圧受容体反射だけではありません。もともとの心臓の問題、薬の効きすぎ、ほかの異常が隠れていることもあります。「正常な反応もある」ことを知るのは、思考停止しないためであって、観察をやめる理由にはしないほうがいいと思っています。
見ておきたいのは、こんなところです。
- 血圧と心拍を、単発ではなく「並べて」追う
- 脈が遅くなるのと同時に、意識・顔色・冷汗など他のサインが出ていないか
- どこまで下がったら気になるか、目標値や許容範囲を医師と共有しておく
数字は「セット」で読む
昇圧剤をどう使うか、脈がどこまでなら許容範囲かを決めるのは医師です。私たち看護師にできるのは、血圧と心拍を切り離さずに見て、「血圧は上がりましたが、心拍がこれくらい下がっています」と、変化をそのまま報告すること。
血圧だけを見て「上がった、成功」で安心しない。上がったからこそ、次に脈がどう動くかまで見る。モニターの数字は、いつも一つでは語らない。そう思って画面を見ています。
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参考文献
- 昇圧薬使用時の圧受容体反射(バロレフレックス)による反射性徐脈に関する循環・薬理の教科書的記載