「乳酸=疲れ」だと思っていませんか。救急外来では、乳酸(Lac)は「細胞の悲鳴」です。
血液ガスの結果が出たら、まずここをチェックしてください。
なぜ「悲鳴」なのか
細胞はふだん、酸素を使ってエネルギーを作っています。ところが酸素がうまく届かなくなると、酸素なしの非常用回路でエネルギーを作りはじめる。そのときに出る副産物が乳酸です。
つまり乳酸が上がっているということは、体のどこかで細胞が酸素不足に陥って、非常用電源で食いつないでいるということ。運動後の疲れの話ではなくて、ショックや敗血症など、全身の循環が破綻しかけているサインとして読みます。
数字の読み方
- 2.0以下:ひとまず安心(正常範囲内)
- 2.0〜4.0:黄色信号。敗血症の疑いあり
- 4.0以上:赤信号。即報告・即アクション
見た目が元気でも、乳酸が高ければ「体の中では悲鳴が上がっている」と考えて動きます。逆に、ぐったりして見えても乳酸が落ち着いていれば、少しだけ心の余裕が持てる。数字が見た目の思い込みを正してくれる場面は、救急では本当に多いです。
数値単体より「変化」を見る
コツは、1回の数値ではなく変化を見ることです。2時間で下がっていれば、治療が効いている証拠。逆に、治療を始めたのに下がってこない、むしろ上がっている——それは「いまの手が効いていない」というメッセージです。
だから乳酸は、1回測って終わりの数字ではありません。再検のタイミングを頭に入れておいて、前回値と並べて医師に報告する。「乳酸、さっきより下がってます」「下がってきません」の一言が、次の一手の判断材料になります。
新人のころの私は、血ガスといえばpHと酸素の数字ばかり見ていました。乳酸を「細胞の悲鳴」として読めるようになってから、患者さんの見え方が変わった気がします。悲鳴は、聞こうとする人にしか聞こえません。
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参考文献
- 乳酸値の解釈とショック・敗血症の評価に関する救急領域の標準的教科書の記載