「とりあえず生(せい)」の感覚で、生理食塩水を選んでいませんか。
新人のころの私がまさにそうでした。棚に手を伸ばして、いちばん見慣れた輸液をなんとなく手に取る。何を聞かれても「先生の指示なので」で終わっていた。ERで修羅場をくぐるうちに、この「なんとなく」がいちばん怖いと思うようになりました。
場面によって、選ぶ理由が変わる
輸液は、どれも同じ「水」ではありません。ざっくりですが、こういう考え方の軸があります。
- 大量出血・ショック:細胞外液(リンゲル液など)でしっかり量を入れる場面
- 脳浮腫が疑われるとき:生理食塩水が選ばれ、リンゲル液は避けられることがある
- 高カリウム血症:カリウムを含む輸液(ラクテックなど)は避け、生理食塩水が選ばれやすい
- 心不全:入れる量は極力しぼる。希釈にブドウ糖液を使うこともある
- アシドーシスが強いとき:重炭酸を含む輸液が候補に挙がる
- 乳酸値が高いとき:乳酸を含むラクテックは避ける、という判断もある
どれを、どれだけ、どの速さで入れるか。これを決めるのは医師です。看護師が独断で選ぶものではありません。
「なぜこれ?」に、自分なりの答えを持っておく
ただ、指示された輸液が「なぜこれなのか」を自分の中で説明できるかどうかで、観察の解像度がまるで変わります。
高カリウムの人にカリウム入りの輸液が用意されていたら、「これで合っていますか」と一言確認できる。乳酸が高いのにラクテックが準備されていたら、手を止めて聞ける。その一言が言えるかどうかは、指示の意図を理解しているかにかかっています。
酸塩基平衡まで見えると、面白くなる
血液ガスを読んで、pHや乳酸まで意識できるようになると、輸液の選択が急に立体的に見えてきます。「なぜこの一本なのか」が腑に落ちる瞬間が増える。
クリティカルな看護が一気に面白くなるのは、たぶんこのあたりからです。詰められて悔しい思いをするより、先に「なぜ」を握っておきたい。私はそう思っています。
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参考文献
- 救急・集中治療領域の標準的教科書における輸液製剤の選択と酸塩基平衡の記載