低ナトリウム血症の補正中に、急に尿が増える。この「急な多尿」は、良くなったサインではなく、赤信号のことがあります。
突然、尿バッグが満タンになり始めたら、ナトリウムの値がロケットのように急上昇しているサインかもしれない。新人のころの私は、尿がたくさん出ると「腎臓が元気で結構なこと」くらいに思っていました。場面によっては、まったく逆の意味を持つと知って、背筋が伸びました。
なぜ「急な多尿」が危ないのか
低ナトリウム血症は、下がったナトリウムをゆっくり戻すのが原則です。ところが体が水を一気に手放し始めると、ナトリウムが急に、しかも想定より速く上がってしまうことがあります。
補正が速すぎると、「浸透圧性脱髄症候群(ODS)」という、脳に不可逆的なダメージを残しうる状態のリスクが出てきます。せっかく治そうとした処置が、速さのせいで別の後遺症を生みかねない。だからこの領域では「速く戻す」ことよりも「速すぎないか」を見張ることが大事になります。
ベッドサイドで見張る3つの数値
治療方針も補正の速度も、決めて調整するのは医師です。でも、その変化にいちばん早く気づけるのは、ベッドサイドにいる看護師です。
- 尿量:急に増えていないか(2mL/kg/時を超える多尿は要注意とされます)
- 尿の濃さ:急に薄い尿になっていないか(尿比重の低下)
- ナトリウムの上がり方:24時間で8〜10mEq/Lを超える速さになっていないか(施設によっては≤8mEq/Lを目安にする)
数字そのものより、「さっきまでと変わった」という流れの変化が合図です。
気づいて、すぐ伝える
「尿が急に増えました」「薄い尿がどんどん出ています」。この一言を、値がまだ出そろう前でも医師に届けられるかどうか。そこから補正速度の調整が始まります。
尿バッグは、ただ量を測る道具ではなくて、体からのメッセージが最初に届く場所でもある。多尿を「順調」と流さず、流れの変化として拾えるかどうかが、看護の見せどころだと思っています。
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参考文献
- 低ナトリウム血症の補正速度および浸透圧性脱髄症候群(ODS)に関する標準的な診療上の記載