「ダイエットの注射を打ったら気分が悪くて」。平日のお昼に救急外来でそう言われると、正直すこし勘弁してって、なります。
責めたいわけじゃないんです。気分が悪いのは本当につらいし、来ること自体を否定する気もありません。ただ、その薬を出したのは救急ではない。打つ前に「どんな副作用が出るか」「出たら誰に連絡すればいいか」を、ちゃんと伝えてもらえていたのかな、と思ってしまうんです。
吐き気も下痢も「想定内」の薬
やせ薬として使われるGLP-1受容体作動薬は、吐き気や下痢が起こりやすいことが知られています。これは薬の効き方に伴う、いわば想定内の反応です。多くは飲み込みながら体が慣れていく範囲のことが多いとされます。
問題は、それを「知らされていない」まま出会うと、本人にとっては得体の知れない急変になってしまう点です。想定内だと聞いていれば落ち着いて対処できたものが、聞いていなければ救急車を呼ぶ理由になる。同じ症状でも、事前の一言があるかどうかで受け止め方がまるで変わります。
救急でできるのは、つらさを受け止めること
私たち看護師にできるのは、まず今のつらさを軽くする準備と、状態の観察です。
- 吐き気や脱水の程度、飲めているか、尿は出ているか
- いつ、何を、どのくらいの量を打ったのか
- 処方したのはどこか、緊急時の連絡先を聞いているか
これらを整理して医師に伝えます。投薬や検査の判断は医師のものですが、「打ったのは救急外来ではない薬で、緊急時の相談先を聞いていないようです」と共有できると、帰るときの説明までつながります。
「出したところ」に戻れる道を
一番伝えたいのは、副作用そのものより、出したところと連絡が取れているか、です。薬を始めるときに「これが出たら、まずここへ」と一本の道が引かれているだけで、深夜や休日の不安はずいぶん減ります。
救急は最後の受け皿ではあるけれど、本来の相談窓口ではない。だからこそ、今日来てくれた人には、次に困ったとき戻れる場所を確かめて帰ってほしいと思うんです。
---
参考文献
- GLP-1受容体作動薬の添付文書における消化器系副作用(悪心・下痢等)の記載