過換気の人に紙袋を口にあてる、あれはもう現場ではやりません。
学生のときは「ペーパーバッグ法」って習った人も多いと思います。吐いたCO₂を吸い戻して呼吸を落ち着かせよう、って理屈は綺麗ですよね。私も昔は、綺麗な理屈だなあと思って覚えました。
でも今は違います。低酸素になるリスクと、過換気のあとに呼吸が止まる現象があると分かってきて、現場では推奨されなくなりました。
理屈が綺麗でも、やめた理由
袋の中の空気は、自分が吐いた息です。あてたまま呼吸を続ければ、CO₂が戻るのと同時に、吸える酸素はどんどん減っていきます。
もうひとつ。過換気の発作は、治まりぎわに呼吸が抑えられる方向へ振れることがあります。そこに袋で酸素の少ない空気を重ねるのは、落ち着かせるどころか危ない方向へ押すことになりかねません。
そして一番怖いのは、「過換気だと思っていたら、別の病気だった」場合です。息が苦しくなる病気はほかにもあって、見た目が過換気とよく似ていることがあります。本当に酸素が足りていない人に袋をあてたら、と考えると、ぞっとしませんか。だから私たちは、過換気「らしく見える」段階では決めつけずに観察を続けます。
じゃあ、何をするのか
道具は要りません。そばに座って、声のトーンを落として、「大丈夫、一緒にゆっくり吐きましょう」。吸うことより、吐くことに意識を向けてもらいます。責めない、焦らせない、置き去りにしない。
呼吸は感情と直結しています。こちらが慌てれば伝わるし、こちらが落ち着けば、それも伝わる。そばにいる人間が静かに構えることが、いちばんの手当てになる場面を何度も見てきました。
家族や友人がなったら
初めての発作のとき。胸の痛みを伴うとき。呼びかけへの反応がおかしい、いつもと様子が違うとき。そういうときは「ただの過換気」と決めつけずに受診してください。
紙袋は、探さなくていいです。探すべきなのは、隣に座って一緒にゆっくり息を吐いてくれる人です。
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参考文献
- 救急医学・救急看護領域の標準的教科書における過換気症候群の対応の記載(ペーパーバッグ法の非推奨を含む)