「心不全=輸液禁止」。この覚え方は、もう古いのかもしれません。
新人のころの私は、心不全と聞いた瞬間に「水は入れちゃダメ」と反射で思っていました。でも実際の現場を見ていると、心不全でも「水が必要なタイプ」がいる。ひとくくりにできない病態なんだと、だんだんわかってきました。
「うっ血」か「低灌流」か
心不全を見るとき、現場で意識したいのは大きく2つの軸です。体に水があふれている「うっ血」なのか、全身に血が回っていない「低灌流」なのか。この組み合わせで、必要な手当てが変わってきます。
- うっ血があって末梢は温かいタイプ:水を絞る方向(利尿薬)が中心になりやすい
- 低灌流で体が乾いているタイプ:むしろ水を足すことが必要になる場面もある
- 低灌流とうっ血が重なった最悪のタイプ:心臓を助けながら、慎重に絞る
同じ「心不全」でも、この見取り図のどこにいるかで、真逆の対応になりうる。だから「心不全だから輸液は禁止」と一律に決めつけないことが大事になります。
看護師が見るのは「うっ血」と「低灌流」のサイン
どのタイプと判断し、何を投与するかを決めるのは医師です。看護師にできるのは、その判断のもとになる体のサインを拾うことです。
- うっ血のサイン:息苦しさ、下肢のむくみ、頸静脈の張り、体重の増加
- 低灌流のサイン:手足の冷たさ、皮膚の斑点、尿量の減少、ぼんやり感、血圧の低下
「手足が冷たくて尿も少ないです」「むくみが強くて息が苦しそうです」——こうした観察を言葉にできると、医師が今どちらの病態をメインに見ているのかが、手に取るようにわかるようになります。
指示の意図が読めると、動きが変わる
この見取り図を頭に入れておくと、「なぜ今このタイプに利尿薬なのか」「なぜここでは輸液なのか」という指示の意図が読めるようになります。
意図が読めれば、次に必要になるものを先回りで準備できる。心不全を「輸液禁止」の一語で片づけず、うっ血か低灌流かで見る目を持つ。それだけで、ベッドサイドの動きがずいぶん変わります。
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参考文献
- 急性心不全の血行動態評価(Nohria-Stevenson分類など、うっ血・低灌流による分類)に関する標準的な記載