「痛がってるから、先に鎮痛薬使っていいですか?」。その気持ちはよくわかります。私も新人のころは、目の前でつらそうにしている人を早く楽にすることが看護だと思っていました。
先に断っておくと、「痛み止めを使うと診断ができなくなるから我慢させる」というのは、今はもう昔の考え方です。適切な鎮痛は診断の妨げにならない、というのが近年の考え方で、つらい痛みを我慢させる必要はありません。
そのうえで、私が現場で大事にしているのは「鎮痛の前に、痛みをちゃんと捉えて記録しておく」という一手間です。
薬でぼやける前の「基準」を残す
痛みが薬でやわらぐと、当然ですが痛みの出方は変わります。それ自体はいいことなのですが、あとから振り返るときに「使う前はどうだったか」の記録がないと、変化を追いにくくなります。
血管が裂ける、腸が締めつけられる——そういう「待ってはいけない腹痛」は、時間とともに痛みの部位や性質が動くことがあります。その動きを捉えるためにも、鎮痛の前後で痛みを記録して比べられるようにしておきたいのです。
看護師がまずやるのは「痛みを捉える」こと
鎮痛薬を使うかどうか・何を使うかを決めるのは医師ですが、その判断材料をそろえるのは看護の仕事です。
- どこが、いつから、どんなふうに痛むのか(差し込む/じわじわ/波がある)
- 動くと痛むのか、じっとしていても痛むのか
- 冷や汗、顔色、血圧や脈の変化、お腹の張り
これらを言葉と数字にして残しておけば、あとで痛みが薬でぼやけても、「使う前はこうだった」という基準が消えません。
楽にすることと、見逃さないこと
痛みは、取っていい。そのうえで、取る前のひと呼吸で「今の痛みはどこに、どんなふうに出ているか」を捉えておく。それを医師と共有しておけば、薬でやわらいだ後も変化を追い続けられます。
楽にすることと、見逃さないこと。この2つは対立しません。順番を意識するだけで、両方を大事にできると思っています。
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参考文献
- 救急看護領域の標準的教科書における急性腹症の初期観察に関する記載