糖尿病の人のコレステロールは、数値が正常範囲でも安心できないことがあります。
健康診断でLDLが基準内。中性脂肪が少し高いだけ。その紙面だけ見ると、「まあ大丈夫」と思ってしまう。以前の私も、検査値が枠の中に収まっていれば、それでひと安心だと思っていました。
「数」ではなく「質」が変わる
でも糖尿病だと、LDLの「数」ではなく「質」が変わってくることがあります。
小さくて硬いLDL――sd-LDL(small dense LDL)と呼ばれるタイプが増えてくる。この小型のLDLは、血管の壁にもぐり込みやすい性質を持っていて、普通のLDLよりも動脈硬化を進めやすいと言われています。
つまり、数としては正常でも、中身が「危ないほう」に化けていることがある。健診の一行では見えてこない変化が、血管の内側で静かに進んでいるかもしれない、ということです。
数字の裏側を、想像できるかどうか
私は看護師なので、コレステロールの治療方針を決めるのは医師の役割です。数値の解釈も、薬を使うかどうかも、そこは医師の判断になります。
ただ、患者さんと話していて「LDL基準内だったから安心してます」と言われたとき、「糖尿病だと、その数字だけじゃ測りきれない部分もあるみたいですよ」と一言添えられるかどうか。そこで「じゃあ次の受診で先生に聞いてみようかな」につながることがあります。
正常値に、油断させられない
検査値が枠に収まっていると、人はどうしても安心してしまいます。それ自体は自然なことです。でも糖尿病という背景があるときは、「正常」の見え方が少し変わる。数字そのものより、その数字が置かれている文脈のほうを見てほしい。
正常値は、いつでも「安全宣言」とは限らない。これは糖尿病に限らず、救急の現場でも何度も思い知らされてきたことです。
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参考文献
- 糖尿病における脂質異常症・small dense LDLと動脈硬化に関する標準的な成書の記載