「せん妄がひどいから、鎮静薬を増やします」。その判断が、実は火に油を注いでいることがあります。
高齢者の鎮静でいちばん怖いのは、寝かせようとした結果、かえって抑えが外れて、せん妄が爆発してしまうパターンです。落ち着かせるつもりの薬が、逆に混乱を強めてしまう。新人のころの私は、暴れている人を見ると「もっと効かせれば静かになるはず」と単純に考えていました。
増やすほど逆効果になることがある
鎮静薬を足していくと眠るどころか、かえって興奮したり、混乱が強まったりすることがあります。とくにご高齢の方では、この反応が出やすいと言われます。量を増やすほど落ち着く、という単純な足し算にならないのが、鎮静の難しいところです。
だから「効いていないからもう一段」と反射的に増やす前に、いったん立ち止まりたい。効かない理由が、量ではなく別のところにあるかもしれないからです。
見落とされがちなのは「痛み」
その別のところとして、まず疑いたいのが痛みです。眠れない、落ち着かない、そわそわして体を動かす——それが実は「痛くて我慢できない」のサインだった、ということが少なくありません。
痛みが残ったまま鎮静だけをかけても、本人はつらいまま意識だけがぼんやりして、かえって混乱が深まる。逆に、痛みがきちんと取れていると、鎮静はずっと少ない量で足りることがあります。「鎮静の前に、鎮痛を終わらせておく」。教科書の一行より、この順番が現場では効きます。
看護師にできること
薬の種類も量も、決めるのは医師です。看護師にできるのは、「なぜ落ち着かないのか」を丁寧に観察して伝えることです。
- 痛がっている様子はないか(表情、体のこわばり、触れたときの反応)
- 尿がたまっていないか、便秘はないか、点滴やチューブが不快でないか
- 明るさ、音、時間帯——環境が混乱を強めていないか
「鎮静を増やす前に、痛みは取れていますか」。この一言を医師に返せる看護師でありたいと思っています。
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参考文献
- 集中治療・救急領域におけるせん妄管理および鎮痛優先(analgesia-first)の考え方に関する記載