「飲み込みにくいから」という理由で、錠剤を勝手に潰して飲むの、やめてください。救急外来に運ばれてくる原因になるくらい、実はめちゃくちゃ危ない行為です。
「ゆっくり効く薬」を潰すとどうなるか
特に危ないのが「徐放性製剤」と呼ばれる、ゆっくり溶けてゆっくり効くように設計された薬です。錠剤の構造そのものが、「少しずつ成分を出す装置」になっています。
これを砕くと、装置が壊れます。
- 24時間かけて溶けるはずの成分が、一瞬で放出される
- 結果、1回分の量なのに「過剰摂取(オーバードーズ)」と同じ状態に
- 血圧低下や意識障害を引き起こすリスクもある
量は間違えていないのに、飲み方だけで中毒のような状態に入ってしまう。良かれと思った工夫が、毒に変わる瞬間です。
見た目では区別がつかない
やっかいなのは、潰していい薬と潰してはいけない薬が、見た目ではほぼ区別できないことです。名前にヒントが隠れていることもありますが、一般の方が確実に見分けるのは無理だと思ってください。カプセルも同じで、中身を出して飲むと「ゆっくり効く仕組み」が壊れるタイプがあります。
新人のころの私は、正直ここまで怖いものだと思っていませんでした。「飲みやすくする工夫でしょ」くらいの認識。薬の形には全部意味がある、と叩き込まれたのはそのあとです。
潰す前に、薬剤師へ
飲み込みにくさは、我慢するものでも、自己流で解決するものでもありません。相談していい困りごとです。
- 同じ成分で、小さい錠剤・口の中で溶けるタイプ・粉や液体に変えられることがある
- その薬が潰していいかどうかは、薬剤師が調べればすぐわかる
- 高齢の家族の薬を管理している方は、「潰して飲ませてもいいですか」を薬局で確認する
救急で働いていると、「本人なりの工夫」が引き金になった搬送に出会います。工夫できるまじめな人ほど危ない、という皮肉な構図。潰す前に、薬局へ一本電話するだけで防げます。
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参考文献
- 徐放性製剤の粉砕リスクに関する薬学領域および救急看護領域の標準的教科書の記載