「SpO2が低い=酸素を増やす」の思考停止は、やめてください。
きつい言い方に聞こえたらすみません。でも、これを知らずに酸素流量をいじるのは、目隠しで運転するくらい怖いことなんです。「CO2ナルコーシス」の話をします。
酸素で意識が落ちる、という逆説
呼吸の司令塔は、ふつう「CO₂がたまってきたら呼吸を増やす」仕組みで動いています。ところが、病気で慢性的にCO₂をため込んでいる人では、この見張りが鈍ってしまい、代わりに「酸素が足りない」という信号が呼吸を支えていることがあります。
そこへ酸素をたっぷり流すと、どうなるか。最後の見張りだった「酸素が足りない」の信号が消えて、呼吸そのものが弱まる。CO₂がさらにたまり、意識が落ちていく。良かれと思って上げた酸素で、患者さんがウトウトし始める。これがCO2ナルコーシスの怖さです。
流量に触れる前に、この5つ
- 基礎疾患:COPDはないか。高度な肥満はないか
- 意識レベル:ウトウトしていないか
- 呼吸数:浅く、ゆっくりになっていないか
- 羽ばたき振戦:手を伸ばして反らせたとき、震えていないか
- 血ガス:pHとPaCO2のバランスはどうか
SpO2という1個の数字ではなく、この5つのセットで「この人の呼吸は今どう支えられているか」を見ます。
「増やす」も「絞る」も、独断でやらない
酸素流量の調整は、医師の指示のもとで行うものです。看護師の仕事は、この5つを見張って、「ウトウトし始めています」「呼吸数が落ちてきました」を誰よりも早く報告すること。逆に、怖くなって独断で酸素を絞るのも同じくらい危険です。低酸素は、それ自体が命に関わりますから。
新人のころの私は、SpO2の数字が上がると素直に嬉しいタイプでした。今いちばん怖いのは、数字が上がったのに、だんだん眠そうになっていく患者さんです。数字の良し悪しと、患者さんの良し悪しは、いつも同じとは限りません。
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参考文献
- 呼吸器・救急看護領域の標準的教科書におけるCO2ナルコーシス(酸素投与時の注意)の記載