問題
深夜の救急外来。意識障害と脱力で運ばれてきた、お酒をよく飲む患者さん。血糖を測ったら低血糖でした。
先輩が「低血糖だからブドウ糖入れるね!」と準備を始めています。さて、このときあなたが意識しておきたいのは、どちらでしょう。
選択肢
A:低血糖は一刻を争う。ブドウ糖の投与をとにかく最速で進める
血糖が下がったままでは脳がもちません。スピード勝負です。
B:ブドウ糖と併せて、ビタミンB1の指示が出ているかも確認する
急ぐのは同じ。ただ、この患者さんにはもうひとつ気にしておくことがあります。
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Bです。
お酒を長く飲んでいる方は、ビタミンB1(チアミン)が欠乏していることが少なくありません。B1が足りない体に高濃度のブドウ糖が入ると、残りわずかなB1が糖の代謝で使い果たされて、「ウェルニッケ脳症」を誘発しうる——私たちはそう教わってきました。実際にどのくらい起こるかの報告は多くないのですが、起きてしまったら取り返しがつかない病態です。眼球の動きの異常、ふらつき、意識障害。回復せず、記憶の障害が一生残ってしまうこともある病態です。
大事なのは、ブドウ糖を止めることではないという点です。低血糖の放置はそれ自体が命と脳に関わるので、投与が遅れていい理由はありません。「ブドウ糖は急ぐ。B1も併せて」が正解のかたちです。
投与の判断も指示も医師のものですが、「この方、飲酒歴ありますけどB1どうしますか」の一言が言える看護師かどうか。そこで患者さんの何十年が変わることがあります。良かれと思った処置が人生を壊す瞬間を見てきたからこそ、この一言はしつこく言い続けたいです。
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参考文献
- 日本救急医学会などの教科書的記載(アルコール多飲者の低血糖におけるビタミンB1併用)
- Wernicke脳症に関する総説(EFNS/UpToDate等)